
「和室を洋室風に変えたいけれど、畳の上にウッドカーペットを敷くとカビが生えるって本当?」そんな疑問や不安を抱えて検索されたあなた、その直感は正しいです。私は長年、畳屋として多くの和室と向き合い、その後工務店でリフォームの現場に携わってきましたが、正直にお伝えします。なんの対策もせずに畳の上にカーペットを敷きっぱなしにしてしまうと、そこはカビとダニの楽園になりかねません。特に気密性の高い現代の住宅や賃貸マンションでは、湿気の逃げ場がなくなりリスクは倍増します。しかし、絶対に敷いてはいけないわけではありません。正しい知識と事前の準備、そして適切なアイテム選びさえ間違わなければ、快適な洋室ライフを手に入れることは可能です。この記事では、プロの視点からカビの発生メカニズムと、誰でも実践できる鉄壁の予防策を余すことなくお伝えします。
- 畳とウッドカーペットの間でカビが発生するメカニズムと危険性
- 賃貸物件でカビさせた場合の原状回復費用と退去時のリスク
- 設置前に必ず行うべき掃除手順と防カビシートの正しい使い方
- 万が一カビてしまった時のエタノールを使った安全な除去方法
ウッドカーペットと畳のカビ発生リスクと原因
なぜ「ただ敷いただけ」で、大切なお部屋がカビだらけになってしまうのでしょうか。その原因は、畳という素材が持つ特殊な性質と、ウッドカーペットによる環境変化のミスマッチにあります。ここでは、普段は見ることのできない床下の世界で何が起きているのか、放置することでどのような被害に発展するのかを、私の現場経験を交えて詳しく解説していきます。
湿気がこもり通気性が悪化するメカニズム
まず理解していただきたいのは、畳は「呼吸している」ということです。畳の材料であるイ草やワラ床は、空気中の湿気を吸い込み、乾燥している時に吐き出すという優れた調湿機能を持っています。これは日本の高温多湿な気候に適した素晴らしい機能なのですが、その上にウッドカーペットを敷くことで状況は一変します。
ウッドカーペットの裏面には、強度を保つための布や樹脂が貼られており、表面は塗装されています。つまり、畳の呼吸口を物理的に塞いでしまう「フタ」の役割を果たしてしまうのです。逃げ場を失った湿気は、畳とカーペットのわずかな隙間に滞留します。この閉ざされた空間の湿度が80%を超え、温度が25℃前後になると、カビの胞子が発芽し、爆発的に繁殖を始めます。
これを専門用語では「水分活性(Aw)の上昇」と呼びますが、要するにカビにとって「飲み水と食べ物が豊富にあるパラダイス」を作ってしまっているのと同じことです。特に梅雨時から夏場にかけては、ほんの数週間で真っ白なカビが畳一面を覆い尽くすことも珍しくありません。「うちは大丈夫」と思っている方こそ、一度めくってみる勇気が必要かもしれません。
ポイント:結露にも注意
冬場も油断大敵です。特に1階のお部屋では、床下の冷たい空気と室内の暖房による温度差で、ウッドカーペットの裏側に「結露」が発生することがあります。この水分が逃げずに畳に染み込み、冬のカビ発生原因になります。加湿器の使いすぎにも注意が必要です。
敷きっぱなしで何年経つと危険なのか
「何年くらいなら敷きっぱなしでも平気ですか?」という質問をよく受けますが、現場を見てきた私の感覚でお答えすると、「環境が悪ければ、たったワンシーズンの梅雨でアウト」です。
もちろん、日当たりが良く風通しの良い2階の角部屋などで、5年以上敷きっぱなしでも無事だったというケースはあります。しかし、それはあくまで「運が良かった」だけです。特に以下のような条件に当てはまる場合は、1年も経たずにカビが発生するリスクが極めて高いと考えてください。
- 1階の部屋(地面からの湿気が上がりやすい)
- 北向きの部屋(日当たりが悪く結露しやすい)
- コンクリート造のマンション(気密性が高く湿気がこもる)
- 普段、あまり窓を開けて換気をしない
一度ウッドカーペットを敷いて家具を載せてしまうと、おいそれとは動かせなくなります。だからこそ、「何年持つか」を賭けにするのではなく、「最初からカビさせない環境を作る」ことが何よりも重要なのです。
賃貸の退去時トラブルと原状回復費用

賃貸物件にお住まいの方が最も恐れているのが、退去時の高額請求ではないでしょうか。「ウッドカーペット 畳 カビ」で検索される方の多くが、この問題に直面しています。
賃貸契約には「原状回復義務」がありますが、通常、畳の日焼けなどの経年劣化は大家さんの負担です。しかし、借主の不注意や管理不足によって発生したカビや汚れは、借主が修繕費用を負担しなければなりません。
これを「善管注意義務違反」と言います。もし、あなたが換気を怠り、ウッドカーペットを敷きっぱなしにした結果、畳をカビさせてしまったとしたら、それはあなたの過失とみなされる可能性が非常に高いです。カビが深くまで浸透してしまうと、畳の表面を張り替える「表替え」では済まなくなり、畳そのものを新品に交換する「新調」が必要になります。
畳の新調は1枚あたり1万円〜2万円程度かかることが一般的です。もし6畳間すべてをダメにしてしまった場合、10万円前後の出費を覚悟しなければなりません。さらに、カビが床下の板にまで移っていれば、その修繕費も上乗せされます。
ガイドラインを確認しましょう
国土交通省のガイドラインでも、借主の管理が悪く発生した「カビ・腐食」は通常損耗には含まれないとされています。退去時に揉めないためにも、日頃の管理が自分を守ることにつながります。
(出典:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』)
カビと同時に発生しやすいダニの被害
カビの話ばかりしてきましたが、実はそれと同じくらい恐ろしいのが「ダニ」の大量発生です。カビとダニは切っても切れない関係にあり、これを専門的には「カビ・ダニ複合汚染(Mold-Mite Complex)」と呼びます。
湿度が60%を超え、カビが発生する環境は、ダニにとっても最高の繁殖場所です。さらに悪いことに、チリダニなどの一部のダニは、カビそのものをエサとして食べます。
ウッドカーペットの下でカビが生えると、それを食べにダニが集まってきます。そして増殖したダニの死骸やフンが、今度は新たなカビの栄養源となる……という最悪の悪循環(スパイラル)が、あなたの足元で繰り広げられることになるのです。
ダニの死骸やフンは、強力なアレルゲンとなります。「部屋に入ると咳が出る」「原因不明の肌荒れが続く」といった症状がある場合、見えない床下でこの複合汚染が進行している可能性があります。カビ対策を行うことは、同時に家族の健康を守るためのダニ対策でもあるのです。
DIY床材・ウッドカーペットの専門店【ELEMENTS】放置すると畳が腐る最悪のケース
「少しカビ臭いけど、面倒だから見なかったことにしよう」と放置すると、どうなるでしょうか。カビは表面だけにとどまりません。
菌糸は畳の目の隙間から内部の「畳床(たたみどこ)」へと侵入していきます。湿気を吸い続けて柔らかくなったワラ床は、腐朽菌(木材を腐らせる菌)のターゲットにもなります。私が過去にリフォーム現場で見た最悪のケースでは、ウッドカーペットを剥がした瞬間、強烈な腐敗臭とともに、畳がグズグズに崩れ落ちたことがありました。
こうなると、畳の下にある「荒床(あらゆか)」と呼ばれる木製の床板や、その下の根太(ねだ)まで腐食が進んでいることがあります。ここまで被害が拡大すると、単なる畳交換では済まず、床の組み直しという大掛かりな大工工事が必要になります。
「見えないから大丈夫」ではなく、「見えない場所こそ、静かに崩壊が進んでいるかもしれない」という危機感を持つことが大切です。早めの対策が、結果的に最大の節約になります。
必ずしも畳の上にウッドカーペットを敷いたらかびるわけではない
ただし、以上はあくまで想定される可能性を列挙したに過ぎず、ウッドカーペット(それ以外の敷き込みタイプの床材も含めて)を敷いたからと必ず株になるわけではございません。
例えば風通しの良い室内などはカビなどは起こりにくいし、逆に何も敷いてない畳でも突然全面にカビたりもします。
通気が悪いだけでは必ずしもカビが生えるわけでなく、湿度や養分のバランスによって生えると思われます。なので黄色くなり切った畳などはイ草の養分も抜けて養分も少なくカビになりにくいと思われます。
ウッドカーペットと畳のカビを予防する対策
脅かすような話ばかりしてしまいましたが、安心してください。ここからは「どうすればカビを防げるのか」という解決策のお話です。適切な手順を踏み、正しいアイテムを使えば、畳の上でもウッドカーペットを快適に使うことは十分に可能です。私が現場で実践している、効果実証済みの予防テクニックを公開します。
防カビシートの効果と正しい敷き方

結論から申し上げますと、畳とウッドカーペットの間に「防カビシート」を挟むのは、よりカビのリスクを低減させる条件です。
新聞紙を敷くという昔ながらの知恵もありますが、カビ対策としては不十分です。むしろ、今の新聞紙は昔のように和紙ではないので、逆に湿気をため込む危険がありお勧めできません。おすすめなのは、専用の「防ダニ・防カビ・除湿」のマルチ機能を持ったシートです。特に、湿気を吸着する「シリカゲル」や「備長炭」を含んだもの、あるいは安全性の高い「ホウ酸塩」などで加工されたシートを選びましょう。ただし、シートも有効期間が永遠ではなく、一定の薬効期間やシートその物の経年劣化もありますので絶対ではありません。また敷かなくてもカビが生えない場合もあったり、逆に敷いても生えるときは生えるものです。過信はやめておいた方が良いでしょう。シートはあれば尚良い程度で良いと思います。
シートを敷く際のプロのコツ
シートは畳全体を隙間なく覆うように敷き詰めます。この時、シートとシートの継ぎ目を10cmほど重ね合わせるのがポイントです。隙間があると、そこから湿気が上がり、ダニが出入りしてしまいます。固定には、畳を傷めにくい専用のピン(上からカーペットで押さえるので数カ所でOK)や、ズレ防止テープを使いましょう。
設置前に行うべき畳の掃除と乾燥
上記のシートよりも、むしろこちらの方が大事です。新品のウッドカーペットを敷く前に、畳の状態を「リセット」することが何より重要です。カビの栄養源となる「ホコリ」「皮脂」「食べこぼし」が残ったままフタをしてしまうと、どんなに良いシートを敷いても効果は半減します。
- 徹底的な掃除機がけ:いつもの倍の時間をかけてください。畳の目に沿って、ゆっくりとノズルを動かします。1畳あたり30秒〜1分かけるつもりで、畳の奥に潜むダニや微細なホコリを吸い出します。(これはしっかりやった方が良いです)
- 完全乾燥:できれば晴天が数日続いた日を選んで作業しましょう。窓を開け放ち、扇風機を当てて畳を乾燥させます。除湿機があるなら、閉め切った部屋で半日ほど「強」運転させ、畳の水分を徹底的に抜いてください。(ただし2は必ずしも必要でなく、風通しの悪い部屋や湿気の多い部屋、雨漏れなどで濡れた部屋、結露の多い部屋や荷物の多い部屋などでは積極的にした方が良いですが、上記に当てはまらない部屋では任意です)。
- エタノールで殺菌拭き:ここがプロの技です。消毒用エタノール(アルコール)を乾いた布に含ませ、畳の表面を拭き上げます。これで表面の目に見えないカビ菌や常在菌をリセットします。エタノールは薬局で売ってる手を消毒するタイプで良く、500ml程度の瓶に入ったものを使います。スプレータイプよりは原液をそのまま雑巾に浸します。
驚くかもしれないですが、私達畳屋が畳のカビ駆除する際には、掃除機でカビを吸い出した後、エタノールを雑巾にボトボトに浸して搾らずそのまま拭き上げます。
水などでそんなことをしたら一発で大きなしみになってしまいますが、エタノールは揮発性が高いので、拭いた瞬間から乾いていくのでシミになりません。
なので少々濡れてても恐れずたっぷり塗布しましょう。
※逆に絶対に水拭きはしないでください!水分を与えることは、カビに餌を与えているのと同じです。

通気性が良い裏面やスリット製品の選び方
ウッドカーペットなら何でも良いわけではありません。製品の構造によって「カビやすさ」には天と地ほどの差があります。
まず避けるべきなのは、裏面にゴムやビニール系の滑り止めが全面に貼られているタイプです。これは通気性がゼロに等しく、畳の上では最悪の選択となります。選ぶべきは、「裏面に不織布やキャンバス地(綿や麻の布)」が貼られているタイプです。布地であれば、わずかながらも空気の通り道が確保され、畳を傷つけるリスクも減らせます。
さらに、板と板のつなぎ目(溝)にわずかな隙間(スリット)がある構造のウッドカーペットは優秀です。歩くたびにその隙間から空気がポンプのように出入りし(ポンピング効果)、湿気がこもりにくくなります。購入時は、表面のデザインや色だけでなく、裏面の仕様や構造もしっかりスペック表でチェックしてください。
カビが発生した際のアルコール除去手順
もし、季節の変わり目にウッドカーペットをめくってみて、カビを発見してしまっても、パニックにならず冷静に対処しましょう。間違った掃除方法は被害を広げます。
【重要】重曹は絶対に使わないで!
ネット上には「カビには重曹やセスキ」という情報が溢れていますが、畳(イ草)に重曹はNGです。重曹のアルカリ成分がイ草の天然色素と反応し、畳が黄色く変色(黄変)してしまいます。一度変色すると元には戻りません。また、お酢も栄養分を含んでいるため、拭き残しがあるとカビの餌になるリスクがあります。
【畳屋直伝】正しいカビ除去プロトコル:
- 換気を確保:胞子を吸い込まないようマスクをし、窓を開けます。できれば汚れてもいい服に着替えましょう。
- 掃除機でカビを吸い取る:カビが生えた個所を掃除機で畳の目に沿って掃除します。その際に掃除機の中にカビが溜まるので、掃除後にはフィルターの掃除が必須です。尚、昔ながらの紙パック型掃除機なら紙パックの交換のみで良いので作業が楽です。
- エタノールを用意:薬局で売っている「消毒用エタノール」(濃度70〜80%)を用意します。無水エタノールではなく、殺菌力の高い消毒用がベストです。
- カビた個所を雑巾で拭き取る:雑巾にエタノールを浸しカビた個所を拭き上げます。ゴシゴシこすると畳の目が傷むので、目に沿って優しく掻き出すように。使い終わった布は捨ててください。可能であれば畳を捲って側面も拭いてください。尚上記にもエタノールでの拭き上げをきさいしていますので参考にしてください。
- 歯ブラシで掻き出す:目に入り込んだカビは、使い古しの歯ブラシにエタノールをつけて優しくブラッシングして除去します。
- 徹底乾燥:掃除が終わったら、ドライヤー(遠くから温風を当てる)や扇風機を使って、エタノールと水分を完全に飛ばします。ここで湿気を残さないことが再発防止の鍵です。
快適に使うための定期的な換気とお手入れ
「防カビシートも敷いたし、ウッドカーペットも選んだから完璧」ではありません。残念ながら、メンテナンスフリーの魔法の床は存在しないのです。
理想を言えば、春(梅雨前)と秋(冬前)の年2回、天気の良い日にウッドカーペットを半分めくってください。そして、扇風機の風を畳に直接当てて「虫干し」をしてあげましょう。空気を入れ替えるだけで、カビのリスクは激減します。
「家具が重くてめくるのは無理!」という場合は、普段からお部屋の湿度管理を徹底しましょう。デジタル湿度計を部屋に置き、湿度が60%を超えたら赤信号です。除湿機を稼働させるか、エアコンのドライ機能を使いましょう。サーキュレーターで床付近の空気を動かすだけでも効果があります。日々の小さな積み重ねが、退去時の10万円を守ることにつながるのです。
ELEMENTSのウッドカーペットと畳のカビ対策
最後に、私が個人的に注目しているDIY専門店【ELEMENTS】のウッドカーペットについて、プロの視点で触れておきます。ここの製品は、単におしゃれなだけでなく、日本の住宅事情をよく研究して作られていると感じます。
特に評価できるのが、カビ対策へのアプローチです。多くのモデルで裏面に「キャンバス地」や「不織布」を採用しており、畳の上で使用することを前提とした通気性が確保されています。また、板の継ぎ目も適度なクリアランスがあり、密閉されすぎない設計になっています。
さらに特筆すべきは、オプションで選べる「抗菌・消臭・防カビ加工(エコキメラ)」です。これは光触媒の進化版で、光の届かない暗い場所(つまりカーペットの下や家具の下)でも、空気中の水分と反応して触媒作用を発揮し、カビや菌の繁殖を抑制するという技術です。これはウッドカーペットの裏側という過酷な環境にはうってつけの機能と言えます。
もちろん、これを使えば「絶対にカビない」と保証できるわけではありませんが、専用の防ダニ・防カビシートと組み合わせて使うことで、リスクを最小限に抑えつつ、憧れのフローリング生活を楽しむことができるでしょう。正しい知識と道具で、賢くDIYを楽しんでくださいね。

